何十年も連絡を取っていなかった親族が孤独死したと、警察や自治体から突然連絡を受けることがあります。故人の生活状況が分からない場合、「借金があったらどうなるのか」「遺品を片付けてもよいのか」と不安になるのも無理はありません。
相続では、預貯金や不動産だけでなく、借金や未払い金などのマイナスの財産も引き継ぎます。相続を望まない場合は、原則として、自分が相続人になったことを知った時から3か月以内に家庭裁判所へ相続放棄を申述しなければなりません。
この記事では、孤独死の連絡を受けた後に確認すること、財産調査の方法、相続放棄の手続き、放棄前後に避けるべき行為を順番に解説します。
髙柳 比呂志HIROSHI TAKAYANAGI
株式会社グッドバイバイ 代表取締役
- 宅地建物取引士
- 不動産キャリアパーソン
- 総合旅行業務取扱管理者
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目次
孤独死の連絡を受けた後に確認すること

突然の連絡を受けても、すぐに遺品整理や賃貸物件の解約を進める必要はありません。まずは、亡くなった人の身元と死亡の事実、自分が相続人にあたるかを確認しましょう。
故人の身元と死亡日を確認する
警察や自治体、病院、管理会社などから連絡が来たら、亡くなった人の氏名、生年月日、住所、死亡日または推定死亡日を確認します。
孤独死では、死亡から発見までに時間が空き、正確な死亡日が分からないこともあります。死亡時の状況によっては、医師による検案が行われ、死因や死亡日時などが確認されます。異状が認められる場合は、警察による検視などを経たうえで、死体検案書が交付されることがあります。
警察による確認や捜査が行われている間は、警察の許可なく室内へ入ったり、物を動かしたりしないようにしてください。
自分が法定相続人か確認する
警察や役所から連絡を受けた人が、必ず相続人とは限りません。連絡先として把握できた親族に連絡しているだけの場合もあるため、戸籍を取得して相続関係を確認します。
配偶者は、順位に関係なく常に相続人となり、以下の順位の血族相続人とともに相続します。
| 順位 | 相続人 | 該当者が先に亡くなっている場合 |
|---|---|---|
| 第1順位 | 子 | 孫などが代襲相続することがある |
| 第2順位 | 父母などの直系尊属 | 祖父母などが相続することがある |
| 第3順位 | 兄弟姉妹 | 甥・姪が代襲相続することがある |
たとえば、叔父や叔母に子や直系尊属がおらず、兄弟姉妹である自分の親もすでに亡くなっている場合、甥や姪が相続人になる可能性があります。
叔父や叔母に配偶者がいる場合でも、配偶者と兄弟姉妹または甥・姪が一緒に相続人になることがあります。疎遠だったことや、何十年も連絡を取っていなかったことだけで相続権が消えるわけではありません。
相続放棄を決める前に財産を調べる

自分が相続人だと分かったら、相続財産を調査します。預貯金や不動産などのプラスの財産だけでなく、借金、未払い家賃、税金、カード利用代金などのマイナスの財産も確認しましょう。
相続放棄を検討している段階では、見つけた財産を持ち帰ったり、使用したり、処分したりしないことが重要です。
借金や未払い金を確認する
故人の自宅に入れる状態になったら、郵便物、督促状、契約書、クレジットカード、ATMの明細などを確認します。固定電話や携帯電話、家賃、医療費、公共料金の未払いも確認しておきましょう。
金融機関やカード会社からの借入れについては、CIC、JICC、全国銀行個人信用情報センターへの開示請求を検討できます。
| 信用情報機関 | 主に確認できる情報 |
|---|---|
| CIC | クレジットカード、信販、携帯端末の分割払いなど |
| JICC | 消費者金融、カードローンなど |
| 全国銀行個人信用情報センター | 銀行ローン、信用保証協会の保証など |
ただし、信用情報にすべての債務が掲載されるわけではありません。税金、家賃、個人間の借金などは別に調べる必要があります。手数料や必要書類は変更されることがあるため、各機関の最新案内を確認してください。
預貯金や証券を確認する
通帳、キャッシュカード、証券会社からの郵便物が見つかった場合は、金融機関へ残高証明書や取引明細を請求します。取引履歴から、保険料、ローン、公共料金など、ほかの契約が見つかることもあります。
ネット銀行やネット証券は紙の通帳がないため、郵便物やメールなどから契約先を探します。ただし、故人のスマートフォンやパソコンを無理にロック解除することは避けてください。
相続放棄を検討している場合は、故人の口座からお金を引き出して使用しないでください。
不動産を確認する
固定資産税の納税通知書や権利証、登記識別情報などから、不動産の有無を確認します。不動産があると思われる市区町村で名寄帳を取得すると、その自治体内にある故人名義の不動産を確認できます。
ただし、名寄帳は自治体ごとに管理されているため、ほかの市区町村にある不動産までは分かりません。また、非課税の土地などが名寄帳に記載されない場合もあります。郵便物や通帳の税金引き落としなどもあわせて確認しましょう。
不動産は必ずしもプラスの財産とは限りません。住宅ローンが残っている、老朽化している、山林や空き家で買い手がつきにくいなど、管理費用や税負担のほうが大きい場合もあります。相続した場合の扱いについては、孤独死した家はどうなる?で解説しています。
保険の契約を確認する
生命保険や火災保険の証券、保険会社からの郵便物も確認します。死亡保険金は、受取人が指定されている場合、原則として受取人固有の財産となり、相続放棄をしても受け取れることがあります。ただし、死亡保険金は契約内容や保険料負担者によって税務上の扱いが異なるため、受け取る場合は確認が必要です。
賃貸住宅では、火災保険などに孤独死に関する特約が付いていることもあります。原状回復費用や特殊清掃費用の話が出た場合は、大家さんや管理会社に保険の加入状況を確認しましょう。
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相続放棄の期限は原則3か月

相続放棄は、原則として自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に行います。この期間を熟慮期間といいます。
起算点は、必ずしも故人が亡くなった日ではありません。故人の死亡と、自分が法律上の相続人になったことを知った時が基準です。
先順位の相続人が全員放棄したことで相続権が回ってきた場合は、自分が相続人になったことを知った時から判断されます。裁判所やほかの相続人などから通知を受けた場合は、封筒や書面を保管しておきましょう。
3か月以内に財産調査が終わらず、相続するか放棄するか判断できない場合は、期間が満了する前に、家庭裁判所へ熟慮期間の伸長を申し立てることができます。
相続放棄の手続き

相続放棄は、故人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所へ申述します。口頭で「相続しない」と伝えたり、親族同士の話し合いで放棄を約束したりするだけでは、法律上の相続放棄にはなりません。
必要書類を準備する
一般的には、次の書類などを準備します。
- 相続放棄申述書
- 故人の住民票除票または戸籍附票
- 申述する人の戸籍謄本
- 故人との関係や先順位者がいないことを確認できる戸籍
必要な戸籍の範囲は、故人との続柄によって変わります。兄弟姉妹や甥・姪が申述する場合は、故人の出生から死亡までの戸籍や、父母の死亡が分かる戸籍など、多くの書類が必要になる傾向があります。
期限までにすべての戸籍を取得できない場合でも、先に申述書を提出し、裁判所の指示に従って不足書類を追加提出できることがあります。
家庭裁判所へ申述する
申述先は、自分の住所地ではなく、故人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。郵送で提出することもできます。
申述には、申述人1人につき800円分の収入印紙のほか、連絡用の郵便料が必要です。郵便料は郵便切手のほか、電子納付で納めることもできます。金額や内訳は裁判所によって異なるため、提出前に申述先の裁判所へ確認してください。
参考元:裁判所 「相続の放棄の申述」
裁判所から照会があれば回答する
申述後、家庭裁判所から書面で照会されたり、事情を尋ねられたりすることがあります。
照会書が届いた場合は、相続放棄の意思、放棄する理由、財産を処分していないかなどを事実に沿って回答し、指定された期限までに返送します。
照会書は必ず届くとは限りません。家庭裁判所が申述の要件を満たしていると判断すれば、相続放棄申述受理通知書が届きます。
受理されたことが債権者へ自動的に通知されるわけではありません。借入先などから請求が来た場合は、相続放棄をしたことを伝えます。必要であれば、家庭裁判所へ相続放棄申述受理証明書を申請できます。
相続放棄した後の財産はどうなる?

相続放棄をした人は、その相続について初めから相続人ではなかったものとして扱われます。ただし、故人の財産や借金そのものが消えるわけではありません。
同順位または次順位の相続人が引き継ぐ
同順位の相続人がほかにいる場合は、その人たちが相続します。たとえば、子が3人いて1人だけが相続放棄した場合、直ちに父母へ相続権が移るのではなく、残る子が相続人となります。
先順位の相続人が全員放棄した場合は、次順位の相続人へ相続権が移ります。子が全員放棄すれば父母などの直系尊属へ、直系尊属もいなければ兄弟姉妹へ移ります。
相続放棄をした人に法律上の通知義務があるわけではありませんが、連絡できる関係であれば、次順位の親族に放棄したことを伝えておくとトラブル防止につながります。
なお、相続放棄をしても、その人の子が代わりに相続することはありません。代襲相続が起きるのは、相続人が相続開始以前に亡くなっていた場合や、相続欠格・廃除に該当する場合であり、相続放棄はこれにあたらないためです。ただし、次順位の相続人へ相続権が移った結果、別の親族が対応を求められることはあります。
相続人がいなくなった場合
相続人がいない場合や、相続人全員が放棄した場合は、利害関係人や検察官の申立てにより、家庭裁判所が相続財産清算人を選任することがあります。
相続財産清算人は、財産を管理・換価し、債権者への支払いなどを行います。清算後に財産が残り、特別縁故者への分与も行われない場合は、最終的に国庫へ帰属します。
清算人の選任を申し立てる際は、財産状況や事案によって予納金を求められることがあります。金額は一律ではありません。
相続放棄しても受け取れる可能性があるもの
- 受取人が指定された死亡保険金
- 遺族年金や死亡一時金
- 健康保険から支給される葬祭費や埋葬料
これらは相続財産とは別に受け取れることがあります。ただし、契約内容や受給要件によって扱いが異なるため、保険会社、年金事務所、健康保険の窓口などへ確認してください。
形見の品にも注意が必要です。時計、貴金属、着物、骨董品などに財産的価値があれば、持ち帰ることで問題になる可能性があります。相続放棄を予定している場合は、自己判断で持ち帰らないほうが安全です。
相続放棄を検討しているときの注意点

相続放棄では、申述前後の行動によって、相続を承認したものとみなされることがあります。特に、財産を売る、使う、隠すなどの行為は避けなければなりません。
- 故人の預貯金を引き出して使わない
- 価値のある遺品を売却・廃棄・持ち帰らない
- 賃貸借契約を自分の判断で解約しない
- 敷金や売却代金などを受け取らない
遺体の引き取りや火葬は通常問題にならない
遺体の引き取り、火葬、埋葬などは、通常、相続財産の処分とは区別されます。
ただし、葬儀費用を故人の預貯金から支払う場合は注意が必要です。社会的に相当な範囲の葬儀費用について、財産の処分にあたらないと判断された裁判例はありますが、個別の事情で判断が分かれます。
相続放棄を予定している場合は、自分のお金から支払う方法が比較的安全です。故人の財産から支出する必要があるときは、事前に専門家へ相談し、領収書を保管してください。発見から火葬までの具体的な流れは、孤独死の葬儀の流れで解説しています。
遺品を売却・廃棄・持ち帰らない
価値のある遺品を売る、捨てる、譲る、持ち帰るといった行為は、相続財産の処分と判断される可能性があります。
警察や管理会社などの確認を得たうえで、財産調査のために室内へ入り、書類や財産の状況を確認するだけであれば、通常は処分にはあたりません。ただし、見つけた物は持ち出さず、元の場所に戻しましょう。
相続放棄が受理された後も、財産を持ち帰る、売却する、隠す、私的に使用する行為は避けてください。行為の内容によっては、債権者などから相続放棄の効力を争われる可能性があります。
孤独死があった部屋の片付けは、通常の遺品整理とは異なり、相続手続きや室内の状態にも注意が必要です。遺品整理の進め方や費用については、孤独死の後始末完全ガイドで詳しく解説しています。
賃貸借契約を自分で解約しない
故人が賃貸住宅に住んでいた場合、大家さんや管理会社から、解約書への署名や早期の明渡しを求められることがあります。
しかし、賃借人としての地位も相続の対象となるため、相続放棄を検討している人が自分の判断で契約を解約すると、相続を承認したと主張されるおそれがあります。敷金の返還を受ける行為にも注意が必要です。
相続放棄を予定している場合は、その旨を貸主や管理会社へ伝え、自分では解約書や残置物処分の同意書などへ署名しないようにしましょう。
なお、自分が賃貸借契約の連帯保証人になっている場合、相続放棄をしても、保証人として負っている責任まで消えるわけではありません。
財産の保存義務が残る場合がある
相続放棄をした人が、必ず故人の財産を管理し続けるわけではありません。
ただし、相続放棄をした時点で相続財産を現に占有していた人は、その財産を相続人や相続財産清算人へ引き渡すまで、適切に保存する義務を負う場合があります。
たとえば、故人名義の家に住み続けている場合や、通帳や重要な財産を保管している場合です。遠方に住み、建物や遺品を事実上管理していない場合は通常この義務を負わないと考えられますが、占有の有無は個別の状況で判断されます。
孤独死の相続放棄に関するよくある質問
Q
3か月を過ぎたら相続放棄できませんか?
A
原則として、相続人になったことを知ってから3か月以内に申述する必要があります。ただし、相続財産が存在しないと信じ、そのように信じたことに相当な理由がある場合などは、後から相続財産や借金の存在を知った時点から3か月以内の申述が認められる可能性があります。
期限を過ぎている場合でも、事情によって判断が異なるため、早めに家庭裁判所や専門家へ相談しましょう。
Q
故人の借金を少しでも払うと相続放棄できませんか?
A
故人の預貯金など相続財産から借金を支払うと、相続財産を処分したとして、単純承認と判断される可能性があります。一方、自分自身のお金から支払う行為は、相続財産の処分にはあたらないと考えられています。ただし、債権者とのやり取りの中で支払いに応じたり返済を約束したりすると、その後の対応が複雑になることがあります。相続放棄を検討している段階では、支払いや返済の約束をする前に専門家へ相談してください。
Q
相続放棄すれば原状回復費や特殊清掃費を払わなくてよいですか?
A
相続放棄が有効であれば、相続人として故人の滞納家賃や原状回復費、特殊清掃費などを引き継ぐことはありません。ただし、自分が連帯保証人になっている場合や、自分自身が費用を負担する合意をした場合は別です。
Q
兄弟や叔父が孤独死した場合も相続人になりますか?
A
兄弟姉妹は第3順位の相続人です。故人に子や直系尊属がいない場合に相続人となります。叔父や叔母が亡くなった場合は、兄弟姉妹である自分の親が先に亡くなっていると、甥や姪として代襲相続する可能性があります。
まとめ
孤独死した親族の相続について連絡を受けたら、まず故人の身元と死亡日、自分が相続人にあたるかを戸籍で確認します。そのうえで、預貯金や不動産だけでなく、借金や未払い金も含めて財産を調査しましょう。
相続放棄の期限は、原則として自分が相続人になったことを知った時から3か月です。調査が間に合わない場合は、期限前に熟慮期間の伸長を申し立てる方法があります。
相続放棄を検討している間は、故人の預金を使う、遺品を売る・捨てる、賃貸借契約を解約する、敷金を受け取るといった行為を自己判断で進めないことが重要です。
期限が迫っている場合、すでに遺品を処分した場合、大家さんや債権者から支払いを求められている場合は、早めに弁護士や司法書士へ相談してください。
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髙柳 比呂志HIROSHI TAKAYANAGI
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愛知県名古屋市出身で、株式会社グッドバイバイ代表取締役。創業以来、熊本県を中心に九州圏で不動産の買取・再販を手がける。事故物件・訳あり物件専門の買取・売却サービス「お清め不動産」を運営し、孤独死・自殺・火災などの物件も現状のまま査定。特殊清掃・遺品整理・供養まで、トラブルを抱えた不動産の売却をワンストップでサポートする。