遺品整理を進めるなかで、「これは捨てても大丈夫だろうか」と判断に迷った経験はないでしょうか。
遺品のなかには、誤って処分すると相続手続きが滞ったり、親族間のトラブルに発展したりするものが数多く含まれています。特に遺言書や通帳、現金などは一度捨ててしまうと取り戻すのが困難で、後から大きな後悔につながりかねません。
本記事では、遺品整理で捨ててはいけないものを「法的理由」「手続き上の理由」「トラブル防止の理由」の3つに分類し、チェックリスト付きでわかりやすく解説します。万が一捨ててしまった場合の対処法や、不要な遺品の処分方法もあわせて紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
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目次
遺品整理で捨ててはいけないもの一覧
遺品整理で捨ててはいけないものは、大きく「法的な理由」「手続き上の理由」「トラブル防止の理由」の3つに分けられます。整理を始める前に、以下のチェックリストで全体像を把握しておきましょう。
| 分類 | 捨ててはいけないもの |
|---|---|
| 法的な理由 | 遺言書・エンディングノート 現金 有価証券・保険証券 |
| 手続き上の理由 | 通帳・キャッシュカード・印鑑 身分証明書・年金手帳 契約書類・ローン明細・土地の権利書 仕事関係の資料 |
| トラブル防止の理由 | レンタル品・リース品 鍵 デジタル遺品 貴金属・美術品・骨董品 写真・手紙・日記 |
以下では、それぞれの遺品について捨ててはいけない理由を詳しく解説します。
遺言書・エンディングノート
遺言書は故人の財産分配に関する意思を示す法的効力のある書類です。誤って処分すると、遺産分割の際に親族間で深刻なトラブルに発展するおそれがあります。
遺言書には主に「公正証書遺言」「秘密証書遺言」「自筆証書遺言」の3種類があります。公正証書遺言と秘密証書遺言は公証役場に保管されていますが、自筆証書遺言は自宅の金庫や引き出しに保管されているケースが多いため、見落とさないよう注意しましょう。
なお、2020年7月からは法務局で自筆証書遺言を保管できる「自筆証書遺言書保管制度」も開始されています。
エンディングノートには法的効力はありませんが、故人の希望や重要な情報が記されている場合があるため、内容を確認してから整理を進めましょう。
現金
遺品に含まれる現金は故人の遺産の一部であり、金額の大小にかかわらず相続の対象となります。
故意に現金を捨てる方はいないかもしれませんが、衣類のポケットや本の間、タンスの奥、仏壇の引き出しなどに「へそくり」として隠されているケースは少なくありません。封筒や紙袋に入った状態でしまわれていることもあるため、遺品を処分する際は中身を一つずつ確認してから判断することが大切です。
発見した現金は金額を記録したうえで一か所にまとめ、相続人全員で共有しておくとトラブルの防止につながります。
有価証券・保険証券
株式や国債などの有価証券、生命保険や医療保険の保険証券も相続対象の財産です。
保険証券を処分してしまうと、保険金の請求手続きが大幅に遅れる可能性があります。見つけた証券類はまとめて保管し、早めに金融機関や保険会社に連絡を取りましょう。
通帳・キャッシュカード・印鑑
故人の銀行口座は、金融機関が死亡を認識した時点で凍結されます。凍結を解除して預金を引き出すためには、通帳やキャッシュカードが必要です。
通帳を処分してしまうと、相続人であっても預金の引き出しが困難になります。また、通帳の記帳内容からは加入保険やローンの有無など、お金の動きを把握できるため、相続手続き全体をスムーズに進めるうえでも重要です。
印鑑についても、実印・銀行印・認印など各種手続きで必要になる場面が多いため、見つけ次第まとめて保管しておきましょう。
身分証明書・年金手帳
運転免許証やマイナンバーカード、健康保険証などの身分証明書は、故人が生前契約していたサービスの解約手続きで必要になります。
解約しないまま放置すると料金が請求され続けるケースもあるため、身分証明書は手続きが完了するまで保管しておきましょう。
年金受給者だった場合は年金手帳や年金証書も必要です。届出が遅れると年金が振り込まれ続け、後日返還の手続きが発生することがあります。
契約書類・ローン明細・土地の権利書
不動産の権利書、賃貸契約書、住宅ローンや自動車ローンの明細書などは、相続手続きに直結する重要書類です。
特に不動産関連の書類を紛失すると、相続登記の際に余分な証明書の取得が必要になり、手続きに大きな遅れが出ます。借金(債務)がある場合は相続放棄の判断材料にもなるため、書類は1枚も捨てずにすべて確認することが重要です。
仕事関係の資料
故人が仕事で使用していた資料や会社から貸与されていた備品は、勝手に処分すると会社とのトラブルにつながる可能性があります。
職場の関係者に確認を取り、不要と判断されるまでは保管しておきましょう。
レンタル品・リース品などの返却物
図書館の本、レンタルDVD、リース契約の機器など、故人が借りていたものは返却の義務があります。
返却せずに処分してしまうと、延滞料金や損害賠償を請求されるおそれがあります。Wi-Fiルーターや介護用品のレンタルなど、一見すると所有物に見えるものがリース契約になっているケースもあるため注意が必要です。心当たりがある場合は、遺品整理の前にレンタル品・リース品の有無を確認しておくとスムーズです。
鍵
住宅の鍵、車の鍵、金庫の鍵、貸金庫の鍵など、鍵類は捨てずに保管しましょう。
鍵の先にある金庫や引き出しに、通帳・印鑑・権利書などの重要書類が保管されている可能性があります。用途がすぐにわからない鍵でも、すべて確認が済むまでは処分しないのが原則です。
デジタル遺品
スマートフォンやパソコンには、ネット証券・暗号資産の口座情報、有料サブスクリプションの契約情報など、相続やサービス解約に必要なデータが保存されています。
安易にデータを消去すると、解約手続きが進められず料金が請求され続けるリスクがあります。また、SNSアカウントをそのまま放置すると、不正アクセスや個人情報の悪用につながるおそれもあるため注意が必要です。
端末は初期化せずに保管し、ログイン情報がわからない場合は専門業者にパスワード解除を依頼することも検討しましょう。
貴金属・美術品・骨董品
金・プラチナなどの貴金属や、掛け軸・陶器・絵画などの美術品・骨董品は、一見すると価値がわからないものも少なくありません。
自己判断で処分すると、実は高額な品だったというケースもあります。価値が不明なものは専門の鑑定士や買取業者に査定を依頼してから判断しましょう。貴金属類は相続の対象にもなるため、親族間で取り扱いを話し合うことも大切です。
写真・手紙・日記などの思い出の品
写真や手紙、日記などは法的な価値はないものの、故人との思い出が詰まった大切な品です。
処分した後に「やはり残しておけばよかった」と後悔するケースは多いため、判断に迷う場合はすぐに捨てず、一定期間保管してから改めて検討することをおすすめします。
遺品整理で捨ててはいけないものがある理由
遺品を闇雲に処分するとさまざまなリスクが生じます。捨ててはいけない理由を事前に理解しておくことで、慎重に整理を進められるようになります。
必要書類の紛失で相続手続きが進まなくなる
遺言書や通帳、権利書などを処分してしまうと、相続に必要な書類が揃わず手続きが大幅に遅れます。再発行や代替手段には時間と費用がかかるため、余計な負担が生じてしまいます。
親族間のトラブルに発展するおそれがある
一部の相続人が独断で遺品を処分すると、他の親族との間で「勝手に捨てた」「大切なものがなくなった」といったトラブルが起こりやすくなります。特に遺言書や貴重品を処分してしまった場合は、遺産分割協議が難航する原因にもなります。
一度捨てると取り戻せないものが多い
写真や手紙、故人が大切にしていた品物などは、一度処分すると二度と手に入りません。感情面での後悔だけでなく、相続関連の書類も再発行できないケースがあるため、判断に迷ったら「捨てない」を選ぶのが安全です。
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遺品整理で捨ててはいけないものを誤って処分した場合の対処法
注意していても、大量の遺品のなかでうっかり大切なものを処分してしまう可能性はゼロではありません。万が一の場合に備えて、主な対処法を把握しておきましょう。
以下で、それぞれのケース別に対処法について解説します。
遺言書を処分してしまった場合
故人が公正証書遺言を作成していた場合は、原本が公証役場に保管されているため再発行が可能です。自筆証書遺言書保管制度を利用していた場合も、法務局にデータが保管されています。
一方、自宅保管の自筆証書遺言を処分してしまった場合は、原則として遺言書がないものとして扱われます。この場合は相続人全員で遺産分割協議を行うことになります。
通帳や印鑑を処分してしまった場合
通帳を紛失した場合は、金融機関の窓口で再発行の手続きが可能です。相続人であることを証明する書類(戸籍謄本など)を持参のうえ、早めに問い合わせましょう。
印鑑を紛失した場合は、実印であれば改印届を提出して新しい印鑑を登録し直すことで対応できます。
その他の書類・貴重品を処分してしまった場合
保険証券は保険会社に連絡すれば契約内容の確認が可能です。身分証明書の多くも、発行元の機関に問い合わせることで再交付を受けられます。
ただし、再発行には時間がかかるケースが多いため、処分に気づいたらできるだけ早く対応することが大切です。
遺品整理で捨ててはいけないものを守る方法
大切な遺品を誤って処分しないために押さえておきたい、ポイントには以下のようなものが挙げられます。
整理を始める前にも、具体的な内容について理解しておきましょう。
遺品整理を始める前に遺言書の有無を確認する
遺品整理で最初にすべきことは、遺言書が残されていないかを確認することです。遺言書には捨ててはいけないものや相続に関する指示が書かれている場合があり、整理の方針を決めるうえで欠かせない情報源となります。
自宅の金庫や引き出し、公証役場、法務局(自筆証書遺言書保管制度)を順番に確認しましょう。
親族間で事前に話し合い・役割分担をしておく
遺品整理は一人で進めず、相続人や親族と事前に話し合ってから始めるのが理想的です。
「何を残すか」「誰が何を担当するか」をあらかじめ決めておくことで、独断での処分によるトラブルを防ぐことができます。遠方に住む親族がいる場合は、写真や動画で遺品の状態を共有するのも有効です。
迷ったものは「保留ボックス」に分けて判断を急がない
捨てるかどうか迷った遺品は、段ボールなどで「保留ボックス」を用意し、一時的に保管しておくのがおすすめです。
一定期間(1〜3か月程度)置いてから改めて判断すれば、冷静な状態で要不要を決められます。焦って処分することが、もっとも後悔につながりやすいという点を忘れないようにしましょう。
遺品整理で捨ててはいけないもの以外の処分方法
捨ててはいけないものを適切に仕分けた後は、不要な遺品の処分を進めます。主な処分方法は以下の3つです。
リサイクルショップや買取業者に売却する
まだ使える家電や家具、衣類、書籍などは、リサイクルショップやフリマアプリで売却できる場合があります。これにより、不要品を有効活用でき、遺品整理のコストを削減することができます。
ブランド品や骨董品は、専門の買取業者に依頼すると適正な価格がつきやすいでしょう。また、リサイクルショップでは、査定後にそのまま買い取ってもらえるため、手間を減らすことができます。
一軒家の遺品整理費用の相場が気になる方は、こちらの記事をご覧ください。
自治体のルールに従い分別して処分する
家具や寝具、大型家電などの粗大ごみは、自治体のルールに従って分別・処分します。多くの自治体では事前の申し込みと処理手数料が必要です。事前に処分方法や回収日を確認し、規定の手続きに従いましょう。
家電リサイクル法の対象品(テレビ・冷蔵庫・洗濯機・エアコン)は自治体の粗大ごみでは回収できないため、購入した販売店やメーカーに引き取りを依頼しましょう。
遺品整理業者にまとめて依頼する
遺品の量が多い場合や、遠方で自分では対応が難しい場合は、遺品整理業者への依頼も選択肢です。業者であれば捨ててはいけないものの仕分けから不用品の回収、買取まで一括で対応してもらえます。
また、業者によっては環境への配慮や、貴重品の取り扱いにも注意を払ったサービスを提供しているところもあります。遺品整理士の資格を持つスタッフが在籍する業者であれば、法的な注意点にも配慮した対応が期待できるでしょう。
遺品整理で捨ててはいけないものについてよくある疑問
遺品整理に関して、多くの方が疑問に感じるポイントをQ&A形式でまとめました。
Q
遺品整理はいつから始めるのがよい?
A
法的な期限はありませんが、相続税の申告期限(被相続人の死亡を知った日の翌日から10か月以内)を考慮すると、四十九日法要の前後に着手するケースが一般的です。
賃貸物件の場合は退去期限があるため、早めの対応が必要になります。気持ちの整理がつかない場合は無理をせず、遺品整理業者への依頼も検討しましょう。
Q
相続放棄する場合でも遺品を処分してよい?
A
相続放棄を検討している場合は、遺品の処分に注意が必要です。
遺品を勝手に処分・使用すると「相続を承認した」とみなされ、相続放棄ができなくなるおそれがあります。相続放棄の手続きは相続開始を知った日から3か月以内に行う必要があるため、迷った場合は早めに弁護士や司法書士へ相談しましょう。
Q
故人の衣類や家具はすべて捨ててもよい?
A
衣類や家具は基本的に処分して問題ありませんが、以下の点に注意してください。
- 衣類のポケットに現金や鍵が入っていないか確認する
- タンスや家具の引き出しの中に貴重品が残っていないか確認する
- 高価なブランド品や着物は買取業者に査定を依頼する
処分前に中身を隅々まで確認することで、重要な遺品の見落としを防げます。
Q
写真やアルバムが大量にある場合はどう保管すればよい?
A
大量の写真やアルバムをすべて保管するのが難しい場合は、スキャナーでデータ化する方法がおすすめです。
自宅のスキャナーやコンビニのマルチコピー機を使えば手軽にデジタル化できます。大量の写真をまとめてデータ化したい場合はカメラ店や専門業者に依頼する方法もあります。USBやクラウドサービスで保管すれば、場所を取らず親族間での共有も容易になります。
まとめ
遺品整理で捨ててはいけないものについて、本記事の要点を整理します。
- 遺言書・現金・有価証券は法的に処分してはいけない
- 通帳・印鑑・身分証明書・契約書類は相続や各種手続きに必要
- レンタル品・鍵・デジタル遺品・貴金属・思い出の品はトラブル防止のために残す
- 誤って処分した場合も、再発行や問い合わせで対応できるケースがある
- 判断に迷ったら「保留ボックス」に入れ、捨てない選択を優先する
遺品整理は心身ともに負担が大きい作業です。大切なものを守りながら進めるためにも、事前にチェックリストを確認し、必要に応じて親族や専門業者と協力しながら取り組みましょう。
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