いらない土地を国に返す方法は?条件や費用・返せないケースの対処法を解説

いらない土地を国に返す方法は?条件や費用・返せないケースの対処法を解説

相続した土地に使い道がない」「固定資産税だけがかかり続けて困っている」——そんな悩みを抱えて、いらない土地を国に返す方法を調べている方は少なくありません。

結論からお伝えすると、2023年4月に始まった「相続土地国庫帰属制度」を利用すれば、一定の条件を満たした土地を国に引き渡すことが可能です。ただし、すべての土地が対象になるわけではなく、承認率は約47%にとどまっているのが現実です。

本記事では、相続土地国庫帰属制度の条件や費用、申請手順をわかりやすく整理したうえで、制度を利用できない場合の代替手段まで解説します。

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相続土地国庫帰属制度とは

相続土地国庫帰属制度は、相続で取得した不要な土地を国に引き渡せる仕組みです。まずは制度の背景と、誰が利用できるのかという基本的なポイントを押さえておきましょう。

制度ができた背景と目的

相続土地国庫帰属制度は、増加する「所有者不明土地」の問題を受けて創設されました。相続で土地を取得したものの手続きがされず、長年放置された土地は、災害復旧や公共事業の妨げとなっています。

この制度は、土地を相続した人が法務大臣の承認を得ることで、土地の所有権を国に移転できる仕組みです。正式名称は「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」に基づくもので、2023年4月27日に施行されました。

国庫帰属が承認されると、土地に関する固定資産税の支払いや管理義務から解放されます。

参考元:法務省 相続土地国庫帰属制度について

制度を利用できる人の条件

相続土地国庫帰属制度を申請できるのは、以下の条件に該当する人に限られます。

  • 相続または遺贈で土地を取得した人(自分で購入した土地は対象外)
  • 共有地の場合は共有者全員で共同申請する必要がある
  • 制度の開始前(2023年4月27日より前)に相続した土地でも申請可能

法人は申請できません。また、共有者のなかに購入で持分を取得した人がいても、他の共有者が相続で取得していれば共同申請が可能です。

国に返せる土地・返せない土地の条件

どんな土地でも国に引き取ってもらえるわけではありません。申請段階で門前払いになる「却下事由」と、審査で落とされる「不承認事由」の2段階で判定されるため、事前に条件を確認しておくことが重要です。

国に返せる土地・返せない土地のポイント
  • 建物がある土地・担保権が設定された土地は申請自体ができない
  • 崖地・地中障害物・境界紛争がある土地は審査で不承認になる
  • 農地や山林も対象だが、山林の承認率は約18%と厳しい

申請できない土地(却下事由)

以下の条件に当てはまる土地は、申請の段階で却下されます。まずはこの基準をクリアしているか確認しましょう。

  • 建物が存在する土地
  • 担保権や使用収益権が設定されている土地
  • 通路など他人に使用されている土地
  • 土壌汚染がある土地
  • 境界が明らかでない土地・所有権に争いがある土地

たとえば、相続した土地の上に実家が建っている場合は、事前に建物を解体して更地にする必要があります。解体費用は100〜200万円程度が目安で、所有者の負担となります。

審査で不承認になる土地

申請が受理されたあとの審査段階で、以下に該当する土地は不承認となります。

  • 一定の勾配・高さの崖があり、管理に過大な費用がかかる土地
  • 地上に管理・処分を妨げる有体物(廃棄物等)がある土地
  • 地下に除去が必要な有体物(埋設物等)がある土地
  • 隣接地の所有者との争訟がなければ管理・処分できない土地
  • その他、通常の管理・処分に過大な費用や労力がかかる土地

つまり、国が管理する際に手間やコストが大きくなる土地は引き取ってもらえない仕組みです。

参考元:政府広報オンライン 相続した土地を手放したいときの「相続土地国庫帰属制度」

農地や山林は国に返せるのか

農地や山林も制度の対象ですが、宅地と比べて承認のハードルが大幅に高い点は押さえておきましょう。

土地の種類申請件数帰属件数
田・畑2,124件858件(農用地)
宅地1,878件986件
山林828件182件(森林)
その他591件655件
合計5,421件2,681件

※令和8年4月30日現在の速報値。却下80件・不承認82件・取下げ1,005件。

参考元:法務省 相続土地国庫帰属制度の統計

山林は物理的なアクセスが困難な場合が多く、境界確認や地上の障害物撤去に手間がかかるため、申請828件に対して帰属は182件と他の地目に比べて厳しい状況です。農地は農業委員会との調整が必要になるケースもあり、スムーズに進まないことがあります。

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国に土地を返す際にかかる費用

相続土地国庫帰属制度の利用は無料ではありません。必ずかかる「審査手数料」と「負担金」に加え、土地の状況によっては解体費や測量費も発生するため、総額を把握したうえで判断する必要があります。

審査手数料は1筆あたり1万4,000円

申請時にかかる審査手数料は、土地1筆あたり1万4,000円です。申請書に収入印紙を貼って法務局に提出します。

注意すべきは、申請を取り下げた場合や、却下・不承認になった場合でも手数料は返還されない点です。申請前に法務局の事前相談を利用して、承認の見込みを確認しておくことを強くおすすめします。

負担金は原則20万円

負担金とは、国が土地を管理するための10年分の管理費相当額として申請者が納付する費用です。承認通知を受け取ってから30日以内に支払う必要があります。

土地の種目負担金の目安
宅地・農地(一部)・雑種地面積にかかわらず20万円
宅地(市街地)面積に応じて算出(20万円超の場合あり)
農地(市街化区域内等)面積に応じて算出
山林面積に応じて算出

原則は20万円ですが、市街地の宅地や面積が大きい山林などは面積に応じた計算式で算出されるため、20万円を超える場合もあります。

その他に発生しうる費用

審査手数料と負担金以外にも、状況によって以下の費用が発生します。

費用項目目安金額発生条件
建物の解体費用100〜200万円土地上に建物がある場合
境界確定測量30〜80万円境界が不明確な場合
相続登記費用5〜15万円相続登記が未了の場合
司法書士等への依頼費用5〜10万円専門家に申請を依頼する場合

建物の解体費用が最も高額になりやすく、制度の利用にかかる総額が数百万円に達するケースもあります。費用対効果を慎重に検討することが大切です。

申請から国庫帰属までの5つの手順

相続土地国庫帰属制度の手続きは、事前相談から国庫帰属の完了まで5つのステップで進みます。審査に半年〜1年程度かかるため、余裕を持ったスケジュールで臨みましょう。

申請から国庫帰属までのステップとポイント
  • 事前相談 → 申請 → 審査 → 承認・負担金納付 → 国庫帰属の5ステップ
  • 審査期間は半年〜1年程度が目安
  • 事前相談で承認の見込みを確認してから申請するのが鉄則

ステップ1:法務局で事前相談する

いきなり申請するのではなく、まずは管轄の法務局で事前相談を受けることが重要です。持参する資料は法務局のホームページからダウンロードでき、相談は予約制で無料です。

事前相談では、土地が却下事由に該当しないかどうかを法務局の担当者に確認できます。この段階で却下に該当すると判断された場合は、申請しても手数料が無駄になるため、必ず事前相談を経てから申請しましょう。

ステップ2:申請書と添付書類を提出する

事前相談で問題がなければ、申請書と添付書類を法務局に提出します。主な必要書類は以下のとおりです。

  • 承認申請書
  • 土地の位置・範囲を示す図面
  • 土地の現況写真
  • 相続を証明する書類(戸籍謄本等)
  • 収入印紙(1万4,000円分)

共有地の場合は、共有者全員の署名・押印が必要です。書類の不備があると補正を求められ、手続きが遅れる原因になります。

ステップ3:書面審査と実地調査を受ける

申請が受理されると、法務局による書面審査と実地調査が行われます。実地調査では、法務局の担当者が実際に現地を訪問し、不承認事由に該当しないかどうかを確認します。

審査にかかる期間は半年〜1年程度が一般的です。申請件数の増加に伴い審査期間が長期化する傾向にあるため、余裕をもったスケジュールで臨みましょう。

ステップ4:承認後に負担金を納付する

審査に通過すると、法務大臣から承認通知が届きます。通知には負担金の金額が記載されており、通知を受けてから30日以内に納付する必要があります。期限内に納付しない場合、承認の効力が失われるため注意してください。

ステップ5:国庫帰属が完了する

負担金の納付が確認されると、土地の所有権が国に移転します。所有権移転登記は国が行うため、申請者側で手続きする必要はありません。移転完了後に通知が届き、すべての手続きが終了します。

制度のメリット・デメリット

相続土地国庫帰属制度には、固定資産税や管理の負担から解放されるという明確なメリットがある一方で、費用面や承認率の低さなど、事前に理解しておくべきデメリットもあります。

メリット

国庫帰属が認められると、土地の所有に伴うあらゆる負担から解放されます。主なメリットは以下の3つです。

固定資産税・都市計画税の負担がなくなる

土地を所有している限り、毎年必ず発生するのが固定資産税と都市計画税です。国庫帰属が承認されれば、これらの税金の支払い義務から完全に解放されます。使い道のない土地に対して年間数万〜数十万円の税負担が続くストレスから解放される点は、制度の最大のメリットといえます。

管理責任がなくなる

土地の所有者には、草刈りや不法投棄への対応、近隣住民とのトラブル対処といった管理責任が伴います。特に遠方の土地を相続した方にとっては、管理のために定期的に現地を訪れる手間やコストも大きな負担です。国庫帰属が完了すれば、これらの管理義務から一切解放されます。

所有権ごと移転するため将来のリスクがゼロになる

国庫帰属では、土地の所有権そのものが国に移転します。そのため、帰属後に土地で何らかのトラブルが発生しても、元の所有者が損害賠償などの責任を負うことはありません。将来にわたってリスクがゼロになる点は、売却や寄付にはない制度独自の安心材料です。

デメリット・注意点

一方で、制度の利用にはいくつかの注意点があります。申請前に把握しておきましょう。

却下・不承認になるケースが一定数ある

審査が完了した案件でも、全てが承認されるわけではありません。申請全体の約半数はまだ審査中または取り下げとなっていることを、理解しておくことが必要です。

費用が数十万〜数百万円かかる

審査手数料1万4,000円と負担金20万円は必ず発生します。さらに、建物の解体(100〜200万円)や境界確定測量(30〜80万円)が必要な場合は、総額が数百万円に達することもあります。「無料で国に返せる」わけではない点に注意が必要です。

審査に半年〜1年程度かかる

申請から結果が出るまでには、書面審査と実地調査を含めて半年〜1年程度を要します。申請件数の増加に伴い審査期間が長期化する傾向にあるため、早めに動き始めることが重要です。

不承認でも審査手数料は返金されない

申請を取り下げた場合や、却下・不承認になった場合でも、1万4,000円の審査手数料は返還されません。事前に法務局で相談し、承認の見込みを確認してから申請することでリスクを抑えられます。

対象は相続で取得した土地のみ

相続土地国庫帰属制度を利用できるのは、相続または遺贈で取得した土地に限られます。自分で購入した土地は対象外のため、別の手段(売却・寄付など)を検討する必要があります。

制度を利用するかどうかは、費用対効果と承認の見込みを冷静に比較したうえで判断することが大切です。条件に合わない土地の場合は、次章で解説する代替手段も検討しましょう。

国に返せない場合の代替手段

相続土地国庫帰属制度の条件を満たせない場合でも、土地を手放す方法はあります。買取・寄付・相続放棄の3つの選択肢を、それぞれの特徴とあわせて確認しておきましょう。

相続土地国庫帰属制度の条件を満たせない場合でも、いらない土地を処分する方法はほかにもあります。状況に合った手段を検討しましょう。

不動産会社に買取を依頼する

国庫帰属制度が使えない場合に最も現実的な選択肢が、不動産会社への買取依頼です。特に、訳あり物件や事故物件を専門に扱う買取業者であれば、通常の不動産会社では断られるような土地でも対応できる場合があります。

買取のメリットは、制度のような厳しい条件がなく、建物つきの土地でもそのまま引き取ってもらえるケースがある点です。仲介に比べて売却価格は下がりますが、確実に手放せるスピード感は大きな強みです。

事故物件が絡む土地の場合は、事故物件の相続について知っておくべき知識もあわせてご確認ください。

自治体や隣地所有者に相談する

自治体によっては、空き家バンクや公有地化の取り組みとして土地の寄付を受け入れている場合があります。すべての自治体で対応しているわけではありませんが、地域によっては有効な手段です。

また、隣地の所有者が土地の拡張を希望しているケースもあります。無償または低額での譲渡であっても、固定資産税の負担から解放されるメリットは大きいでしょう。

相続放棄を検討する

まだ土地を正式に相続していない段階であれば、相続放棄という選択肢もあります。ただし、相続放棄には重要な制約があります。

  • 期限は相続を知ってから3か月以内(家庭裁判所への申述が必要)
  • すべての財産を放棄する必要がある(土地だけを放棄することはできない)
  • 相続放棄後も、次の管理者が決まるまで管理義務が残る場合がある

預貯金や有価証券などの有益な財産もすべて手放すことになるため、土地の負担と他の財産の価値を比較したうえで慎重に判断してください。相続に関する疑問は、相続人がいない土地の扱いもあわせてご参考ください。

いらない土地を国に返すことに関するよくある質問

いらない土地を国に返す方法について、多くの方が疑問に感じるポイントをまとめました。制度の利用を検討している方は、あわせてご確認ください。

Q

10年経ったら土地は戻ってくる?

A

いいえ、戻ってくることはありません。よくある誤解ですが、「10年」は負担金の計算に使われている数字(管理費10年分という意味)であって、「10年間だけ預かる」という期限のことではないのです。

帰属が完了した時点で所有権は国に移り、それ以降ずっと国のものです。元の持ち主に返す仕組みは法律上ありませんので、「いずれ戻ってくるのでは」という心配は不要です。

Q

申請って自分でもできる?やっぱり専門家に頼むべき?

A

結論としては、自力でも申請できます。必要な書類のフォーマットは法務局のサイトで公開されていますし、事前相談も予約すれば無料で受けられます。

ただ、実際にやってみると戸籍集めや図面作成が思った以上に面倒だったという声は多いです。共有者が複数いる場合は全員の署名も必要になるので、段取りに自信がなければ司法書士に任せてしまうのも現実的な選択です。費用の目安は5〜10万円程度です。

Q

国に渡した土地って、そのあとどうなるの?

A

「国に渡したあと放置されるのでは?」と気になる方もいるかもしれませんが、帰属後の土地はきちんと管理先が決まります。田畑は農林水産省、山や森は林野庁、宅地などそれ以外は財務局がそれぞれ担当します。

財務局が引き受けた土地は、地方自治体や公共事業への売却・貸付などに回されるため、ただ眠らせておくのではなく再活用の道が探られる流れになっています。

まとめ

いらない土地を国に返す方法として、2023年4月に始まった相続土地国庫帰属制度があります。審査手数料1万4,000円と負担金原則20万円で利用でき、承認されれば固定資産税や管理義務から完全に解放されます。

ただし、承認率は約47%にとどまっており、建物がある土地や境界が不明な土地など、条件を満たさなければ利用できません建物の解体や測量が必要な場合は、費用が数百万円に達することもあるため、費用対効果の慎重な検討が欠かせません。

制度を利用できない場合は、訳あり物件に強い不動産会社への買取依頼が最も現実的な手段です。自治体への寄付や相続放棄といった選択肢もあわせて比較し、ご自身の状況に合った方法で、いらない土地の負担から早めに解放されることをおすすめします。

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